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今だから知っておきたい正しい消毒薬の選び方
<ウイルス感染対策編>

 ウイルスは細菌に比べるとそのサイズは小さく、自己増殖出来ない為、細菌のようにコロニーを形成することが出来ません。ウイルス粒子の基本構造は、芯の部分にある核酸(DNA又はRNA)をカプシドと言うタンパク質の殻が取り囲んでいます。ここまでは全てのウイルスに共通しているのですが、その外側にエンベロープと呼ばれる脂質膜を持つ‟エンベロープ型”と、持たない‟ノンエンベロープ型”があります。すなわち、構造上の特徴をもとにして‟エンベロープ型”と‟ノンエンベロープ型”の2つのタイプに分けられています。
 ‟エンベロープ型”で一般的に馴染みが深いウイルスは、インフルエンザウイルスですが、新型コロナウイルス(SARS‐CoV‐2)も含まれます。‟ノンエンベロープ型”ではノロウイルスです。
 一般的に‟エンベロープ型”に比べると‟ノンエンベロープ型”のウイルスは消毒剤に対する抵抗性が強いことが知られており、‟エンベロープ型”のウイルスは‟エンベロープ”の脂質二重膜がダメージを受けると不活化されてしまいます。一方で、‟ノンエンベロープ型”のウイルスの場合、凍結や乾燥につよく、酸性(pH2.7で3時間)条件下でも、エタノール(75%・30秒)や、加熱(60℃・30分)による処理でも、感染性は維持されます。なお、熱で不活化するには、85℃~90℃で90秒以上加熱する必要があります。
 また、消毒剤による不活化については国立医薬品食品衛生研究所食品衛生部による平成27年度調査報告書に於いて報告されています。それによると、各種塩素系製剤・アルコール製剤の代替ノロウイルス不活化効果確認試験の結果、塩素系製剤では次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸水、亜塩素酸水に顕著な不活化活性が認められましたが、二酸化塩素には認められていません。高有機物存在下で顕著な不活化効果が認められたものは「亜塩素酸水」だけでした。なお、アルコール製剤の不活化活性には大きなバラつきがみられます。
 今回の新型コロナウイルスに対する感染対策には、エタノール(アルコール)が、消毒剤として広く利用されていますが、エタノールの供給が困難である状況に伴い、その代替品として「次亜塩素酸水」が全国各地の自治体をはじめとして爆発的に使われ始めました。しかしながら、その実態を顧みると、正規の「次亜塩素酸水(酸性電解水)」よりも、「次亜塩素酸ナトリウム」に酸を混和・希釈した「疑似次亜塩素酸水」の方が「次亜塩素酸水」という名前で数多く出回っていたり、「次亜塩素酸ナトリウム」の希釈液そのものが「次亜塩素酸水」として出回っているケースも見受けられます。
 そこで、我々三慶グループとしましては、出来る限り正しい情報を提供し、正しい選択をして頂く為に、以下にウイルスの不活化に有効である殺菌消毒剤の特徴を捉えて、まとめてみました。

1.次亜塩素酸ナトリウム(次亜塩素酸ソーダ: Sodium hypochlorite):食品添加物殺菌料です。

 「次亜塩素酸ナトリウム液」は、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)に、塩素ガスを吹き込んで作られているため、強アルカリ性で、その有効塩素濃度は4%(4万ppm)から12%(12万ppm)の製品が一般に市販されており、目的に応じて希釈して使用します。なお、1950年に食品添加物に指定されましたが、原液は手肌に触れると危険です。
細菌類、真菌類、ウイルス等に広範囲の殺菌活性を示し、日本における衛生管理のための基本消毒剤といって良いほど使われています。
 一般的に、ウイルス対策としては、200ppm以上の濃度で、ドアノブや調理器具機材類、調理施設や厨房など一般施設の清掃時の殺菌、除菌、消毒等に清拭や浸漬で用いられます。
 なお、ノロウイルス等のエンベロープを持たないウイルス対策としては500ppm以上での使用が推奨されており、ウイルスと有機物が多量に存在する糞便や嘔吐物等の処理には1000ppm以上、場合によっては5000ppmでの処理が必要になります。但し、次亜塩素酸ナトリウムは強アルカリ性の液体品であり、タンパク質や脂質を変性させ、皮膚や粘膜に対してダメージを与えるので、手指の消毒には使えず、その取り扱いには、十分注意が必要です。
また、処理時の刺激臭と、処理後の残臭の酷さによって作業環境が劣悪化するため、現場での使用を避けられている大きな原因の一つになっています。

2.次亜塩素酸水(Hypochlorous acid water):食品添加物殺菌料です。

 正規のものは、第9版食品添加物公定書に記載されています。希薄な食塩水や塩酸水を電解生成装置で電解すると、陽極反応で塩化物イオン(Cl-)から塩素ガス(Cl2)が生成され、それが水分子(H2O)と反応して次亜塩素酸(HClO)と塩酸(HCl)を含む酸性電解水が生成されます。これが本来の「次亜塩素酸水」で専用の電解生成装置とセットで食品添加物殺菌料に指定されました。
当初は酸性電解水として認可申請されたのですが、2002年に「次亜塩素酸水」という新名称が与えられました。つまり、「次亜塩素酸水」とは本来、酸性電解水のことなのです。なお、この「次亜塩素酸水」の特徴は、安全性と殺菌活性が高く、低濃度(10~80ppm)で、広範囲の細菌類、真菌類、ウイルスに活性を示します。ただし、有機物存在下では有機物と即座に反応して活性が著しく減退するので、有機物汚れをあらかじめ除去しておいてから使用することがとても重要です。なお、この「次亜塩素酸水」そのものは市販されていません。あくまでも生成装置をユーザーが購入し、使用現場で自らがこの生成装置を操作して作製し、新鮮なうちに使用します。正規の生成装置(2017年にJIS規格:JISB -8701が制定されている)であれば、必ず規定の濃度範囲の「次亜塩素酸水」が生成されるように設定されており、できる限り出来たてのうちに希釈せず、流水状態いわゆるかけ流し、もしくはオーバーフローで使用することが原則です。なお、水道の蛇口につなぐ流水型の生成装置からは連続して生成されるので流水で使用する事も出来、又、大型タンクに貯水してそこから配管で流水使用する事も出来ます。
 現在、3種類の酸性電解水、「強酸性(pH2.7以下)、弱酸性(pH2.7から5.0)、微酸性(pH5.0から6.5)」が「次亜塩素酸水」として認可されており、その有効塩素濃度は、それぞれ強酸性で20~60ppm、弱酸性で10~60ppm、微酸性電解10~80ppmです。よってこれらをまとめるとpH6.5以下、有効塩素濃度は10 ppm~80 ppm ということになります。

※(一財)機能水研究振興財団発行の機能水ニュースレター No. 95 から許可を得て引用、加筆(亜塩素酸水の欄)

3.疑似次亜塩素酸水: 公的認可はありません。

 「次亜塩素酸ナトリウム」に酸を混和・希釈して酸性化した水溶液が、「次亜塩素酸水」の名称で出回っています。しかし、これは食品添加物の「次亜塩素酸水」とは似て非なる「疑似次亜塩素酸水」です。
一番の問題は、メーカーまたはサプライヤーによる自主的な製品で濃度規格が無いので、「次亜塩素酸水」の規格濃度よりもかなり高濃度のものが出回っていることです。
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、この「疑似次亜塩素酸水」による健康被害(のどや目の痛みなど)に関する問合せや苦情が多数届いています。
 なお、「疑似次亜塩素酸水」の問題点は、公的に認められたものではなく、安全性に関する客観的エピデンスや濃度規制がないため、販売されているものは200ppm以上の高濃度で、中には1,000ppm超のものも出回っていることです。
こうしたものが「次亜塩素酸水」という名称で流通していることが本来の「次亜塩素酸水」の信用を損なうことに働くことは自明です。
そこで、カテゴリー名で差別化を図るということが考えられていて、「酸性化次亜水」というカテゴリー名が提唱されています。
 なお、 「酸性化次亜水」という名称は以下の理由で市場の理解を得られるのではないかと考えられているようです。※
「厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課長通知 平成16年8月25日付の食安基発大0825001号」による「次亜塩素酸ナトリウムに酸を混和して使用することについて」の中に、
「2.また、平成11年6月25日衛化第31号厚生省生活衛生局食品化学課長通知「いわゆる電解水の取扱いについて」の2において、食品添加物「次亜塩素酸ナトリウム」を希釈したものと同等と取り扱われているいわゆる電解水についても、上記2.「次亜塩素酸水」と同様に取り扱うものとする。」という記載があります。この「いわゆる電解水」は、通知が出てしばらくしてから「電解次亜水」という名称が定着しました。その理由は、「次亜塩素酸ナトリウム」希釈液の通称として「次亜水」が一般化していたためです。」。このことから、二液混合による疑似次亜塩素酸水を「酸性化次亜水」と呼ぶことが提唱されたようです。

※(一財)機能水研究振興財団発行の機能水ニュースレター 号外 R2-1から許可を得て引用・加筆

4.亜塩素酸水

 もっとも新しく食品添加物に認められた殺菌料(2013年)であり、その製法は第9版食品添加物公定書の中に定義とともに定められています。又、その主たる有効成分である亜塩素酸(Chlorous Acid:クロラス酸)は、広範囲の細菌類や、真菌類、ウイルスに強い活性を示すと言う文献が多数あり、平成27年度の国立医薬品食品衛生研究所からの報告で、代替ウイルスではあるが、‷エンベロープを持たないウイルスで薬剤耐性がつよいノロウイルスに対して高い有機物存在下で唯一強い不活化活性を示した。‟ と発表され、一躍脚光を浴びる事になりました。さらに2019年医薬品第二類殺菌消毒剤の承認をきっかけに多くの利用価値に期待が寄せられています。
 なお、亜塩素酸(HClO)を主たる有効成分に持ち、この亜塩素酸を長期間液中に安定させる事に成功した「亜塩素酸水」は、「次亜塩素酸ナトリウム液」と同様に4万~6万ppmの製品が、医薬品用の原料として、一部で流通されています。なお、「亜塩素酸水」は有効塩素濃度ではなくヨウ素還元滴定法による含量(HClO=68.46として)で、その濃度が表されており、又、その酸化力はDPD比色法による遊離塩素濃度で示されているので注意が必要です。なお、亜塩素酸(HClO)の取り扱いはとても不自由な為、亜塩素酸の特徴でもある液中で非常に安定している事を利用して、いつでも、誰もが、どこにでも、自由に持ち運んで使用出来るように、又、必要に応じて使用することが出来るように、400~8000ppmに希釈調整された製品が流通しており、目的に応じてこれをそのままもしくはさらに希釈して清拭、浸漬、滴下利用されています。他にも、8000ppm以下という使用濃度範囲であれば、金属腐食が少なく、皮膚・粘膜に刺激を与えない事から、噴霧による食材の殺菌処理が認められており、米国では主として獣畜肉類や家禽類の病原微生物(キャンピロバクター属菌、サルモネラ属菌、腸管出血性大腸菌群等)の殺菌に、又、野菜類や香辛料、穀類、豆類に、常在する熱耐性菌(通常加熱では殺菌出来ない耐熱性の芽胞形成菌)の殺菌や、カビや酵母菌等の真菌類の殺菌に浸漬だけではなく噴霧でも広く利用されています。なお、国内では、「大量調理施設衛生管理マニュアル」や各種衛生規範に登場するようにはなりましたが、まだまだ具体的な活用方法については今後の展開に期待が寄せられており、その為にも、殺菌メカニズムや作用機序の解明が急務であり、又それこそがこの「亜塩素酸水」の鍵となるであろうと言われています。

5.推奨利用箇所

  まずウイルス対策用の殺菌消毒除菌剤の選び方についてですが、 一般にビルの出入口や施設や公共交通機関等不特定多数の人達が出入りするような場所に設置して手指の除菌や殺菌・消毒にもっとも適しているものは消毒用アルコールやアルコール製剤です。なお、その濃度としては75%~85%のアルコールが推奨されます。
 ただし、アルコールの欠点は濃度が下がると効力が低下してしまうことです。50%より下がると極端に効力が低下してしまいます。これはアルコールの殺菌メカニズムに起因しています。アルコールの殺菌メカニズムはタンパク質や脂質の変性殺菌ですからタンパク質や脂質で構成されているエンベロープを持つウイルスすなわちインフルエンザウイルスやコロナウイルスには効果を発揮しますが、エンベロープを持たないノロウイルスなどには効きにくいと言う事になります。水分が多い環境下では付着している水分で濃度が著しく低下してしまいますので、このような場所での使用は不向きと言わざるを得ません。もし仮に99%の消毒用アルコールを1~2ml噴霧処理したとしても、そこに1~2mlの水滴があれば、それでアルコールの濃度は50%以下になり、期待通りの殺菌効果が得られないと言う事になりますので、十分気をつけて使用することが重要です。
 水気の多い場所での殺菌・除菌に向いているのは、「次亜塩素酸ナトリウム」いわゆるハイター、ブリーチです。「次亜塩素酸ナトリウム」の200ppm液で浸漬又は清拭すれば細菌類や真菌類、ウイルス対策にはとても効果的です。ノロウイルスなどノンエンベロープウイルスの対策には500ppm液での使用が推奨されており、有機物が多い環境下、いわゆる汚れが多い場所では1000ppm以上、糞便や嘔吐物処理には5000ppmで処理する必要があるとも言われています。しかし、この「次亜塩素酸ナトリウム液」は、皮膚や粘膜に刺激的で、肌荒れ手荒れ粘膜傷害等を引き起こすので、とても扱いづらいという欠点があります。
また、金属腐食が激しく、処理時の強烈な塩素臭さらに処理後の反応臭の酷さが激しいため、劣悪な作業環境になってしまいます。このことは感染症対策にとって非常に大きな作業上の問題だと言われています。そんな時、厨房や調理施設や食品加工場並びにセントラルキッチン等大量の水と大小に関わらず広くて大きな場所の殺菌除菌に適しているのが「次亜塩素酸水」で、この「次亜塩素酸水」は現場に設置した酸性電解水生成装置から連続的に生成されるので、それを水道水のようにかけ流して使用することが出来便利です。また、このことが使用する上での原則であり、有機物汚れが多い場合には、予め汚れを除去してからの使用が原則となります。
 但し、このような有機物が多い汚れた環境下でも効力を発揮するのが「亜塩素酸水」です。
なので、「亜塩素酸水」を用いて殺菌除菌消毒する事をお勧め致します。「亜塩素酸水」は、どんな場所にでも、誰もが必要な時に必要な場所に持ち運んで使用、設置する事ができる特徴を持っていて、食塩を電気分解して得られる液体品は、この「亜塩素酸水」だけなのです。よって水分が多く汚れも多いトイレや洗面所、浴室や台所等に設置して使用するには、とても便利で且つ適しています。
 以上のように、それぞれの長所と短所を十分に理解した上で、目的に応じたものを選んで使用することこそが肝心ですが、不特定多数の人々が出入りする場所では「アルコール」、水を使われる場所では「次亜塩素酸ナトリウム」、多量に必要とするところでは「次亜塩素酸水」、そして有機物が多い汚れた環境下であるトイレやキッチン、浴室や手洗い場等の水回りではこの「亜塩素酸水」の使用を強くお勧めします。

監修: 公益財団法人 ルイ・パストゥール医学研究センター
機能水研究部門  吉川敏一 堀田国元